あきかる

石ダテ コー太郎(ちゃんとした)アニメ監督への道

 

 

ishi

 

 

 

ちょっと変わったアドリブCGアニメを作っております私・石ダテが“ちゃんとした”アニメ監督を目指して奮闘する日々を綴っております連載コラム、第3回目です。「日々」とは言いつつ2ヶ月に1回なので全然「日々」にはなっておりませんが、では第1回から4ヶ月間経ちアニメ監督として何が成長したのかと言えば、さっぱりです(笑)。なので幸か不幸か2ヶ月に1回でも問題のないコラムとなっております。

 

さて、原稿を書いている現在ですが、『みならいディーバ(※生アニメ)』の制作がちょうど後半の佳境を迎えつつ、それ以外にDLEさんと一緒に作る『トランスフォーマー・コンボイの謎』を題材にしたショートアニメや、『てさぐれ!部活もの』の何かしらの続編(3期とは言っていない)、男性声優さんを起用したとあるWEB人形劇と、3本もの新作が動き始めて殺人的なスケジュールとなっております。はい、相変わらずどれも全然“ちゃんとしてない”アニメばかりです…あっ、ひとつはアニメですらなかった(笑)。 関わる作品が増えてきたということを受け、所属するアニメ制作会社・ヤオヨロズから(具体的には福原Pから)「そろそろ演出家として後輩を育て始めて欲しい」との要望を受けました。まだ自分がちゃんとしたアニメ監督になれてもいないのに下を育てなくてはいけないという、なかなかのジレンマですねぇ。 そして人を探す上で「石ダテさんが作るアニメを引き継ぐためにはその人にどんなスキルがあればいいですか?」と聞かれたのですが、これが意外にも返答に難しい質問だということに気が付きました。

 

というわけで今回はちょっと主題とそれますが「後輩育成」のお話です。僕は門外からアニメの世界にお邪魔したので、なんとかそこで結果を出すために試行錯誤して、自分がこれまでに体得してきたスキルを組み合わせて活かすという独特なスタイルを作ってしまっています。お笑い芸人、テレビのバラエティ番組の放送作家、アニラジの放送作家、舞台の脚本・演出、コミケでの同人誌制作、趣味のアニメ鑑賞・・・それらの経験のどれかひとつでも欠けていたなら今の形にはなっていなかったのではないかと思います。

 

僕がこれまでに作って来たアニメ作品なんて低予算だし尺も短いし、ちゃんとしたアニメから見れば全然胸を張れるような作品じゃないんですが、それを作るために必要なスキルということに関して言えば “かなり特殊で複合的な要素が必要だ” ということでしょうか。

 

加えて最近「クリエイターにはこのスキルが必要だ」と強く感じた要素があります。それは「自分のやりたいこと、作りたいものを持っている」ということと、「マスで仕事をした経験がある」ということの2点です。 若いクリエイターなら前者はまず間違いなく持っていることでしょう。だからクリエイターになるわけですから。どちらかというとこっちは「年齢を重ねても持ち続けること」が難しい能力です。痛感したのは後者で、マスを相手にモノ作りをした経験がない人は最大公約数のユーザーを相手にするという感覚が育ちません。どれだけ他の経験をつんでもその感覚が育たないと、程度の差こそあれ、作り手のマスターベーション的な作品しか作れない人になってしまいます。

 

この前者と後者はすごく平たく言えば「主観と客観の両方の物差しを持って作品作りをする」ということなのですが、マスでの制作経験がないと尺度の小さい「客観の物差し」しか持っていないということになります。

 

幸せなことに僕はお笑い芸人時代の貪欲な感覚をこの年齢まで持ち続けることができ、さらには放送作家として民放キー局のゴールデン番組制作に関わるという経験をさせていいただきました。日本国内に限って言えば、作り手としてこれ以上に「尖った主観」と「広い客観」の感覚を同時に持てるということは、なかなかない恵まれた経験であったと思います。この両者の振り幅の大きさこそがクリエイターとして最大の武器になるものです。

 

ちょっと話はそれますが、宮崎駿監督の『風立ちぬ』の中で「クリエイターが第一線で活躍できるのは人生でたった10年しかない」というようなセリフが出てきました(※たぶん僕の意訳です)。個人的に宮崎さんが言うなら本当のことだろう!と胸に突き刺さりましたが、この時期がなぜ10年しかないかというのは、おそらく衰退していく「尖った創作意欲」と、経験して徐々に手に入れる「マスを相手にする感覚」の両方を武器にできる時期が10年しかない、ということなのだろうと思います。個人差はあると思いますが、おそらく35歳〜44歳くらいになるのでしょうか(僕もあと数年しかない!)。 話を戻します。
さぁ困りました。そんなピンポイントで同じ経歴を持った人材なんてまず居ません。仮に居たとしても、僕と同じくらいおっさんのはずで、後輩として育てる人材にはなりません(笑)。というわけで、次回に続きます…

 

 

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石ダテ コー太郎
アニメ監督・脚本家・放送作家
代表作は『てさぐれ!部活もの』『直球表題ロボットアニメ』『gdgd妖精s』
1974年5 月27日生まれのB型 趣味は料理、アニメ鑑賞など

 

 

 

 

 

ishi

 

 

お笑いやバラエティ番組の方法論を使って“映像のついたアニラジ”のような3DCGアニメを作っている私・石ダテコー太郎が「ちゃんとしたアニメ監督」になるべく、日々の奮闘ぶりを綴っていこうという連載コラムです。

 

前回、「アニメ監督の仕事とは、明確な演出意図を持って、シナリオ&音響&映像の3セクションで作られるものをひとつの作品にまとめあげることだ」「だからアニメ制作の勉強をしてこなかった僕にもなんとかアニメ監督という役職を務めることができている」ということを書かせていただきました。

 

普通はアニメ監督というのは作画監督上がりか制作進行上がりの人が多いそうです。つまりアニメ映像制作のノウハウを熟知している人が監督になるということです。一般的にはシナリオ・音響・映像という3つのセクションの中で、アニメ映像を作るセクションの重要度が最も高い、ということでもあります。当然と言えば当然ですよね、他ならぬ「アニメ」というジャンルなわけですから。

 

しかし僕の作品の場合はちょっと違います。映像を作るよりも先に音声を作る「プレスコ収録」という方法であるということ、そしてそのプレスコ収録だからこそできる声優さんの「アドリブ演技」を多く取り入れた制作スタイルであるためです。これは先にも述べさせていただいた通り、僕がこれまでに勉強してきた「お笑い」と「バラエティ番組」の制作方法を他所にはない武器として有効活用するためです。シナリオはあるものの実際に収録をしてみるまではどのような内容になるのか誰も分からない状態です。そしてその音声に後から映像を付けてもらう、というワークフローになっています。アニメ業界では作品を作る上で一番重要な設計図とされる「絵コンテ」が作られる前に、オンエア尺の「音声」が出来上がっているんです。なので、作品全体の大枠を作り上げる作業、建築で言えば家を立てる作業はシナリオと音響制作で、映像制作は建った家の内装工事のような役割になります。本来なら真逆なんです。これは一般的なアニメ制作においてかなり特殊な状況ではないかと思います。これが、僕が「ちゃんとした」アニメ監督ではない最大の理由でもあります(笑)。

 

そんなかなり特殊なスタイルで、しかもアニメ製作のノウハウを全く勉強してこなかった監督ですので、キャストのみならず各スタッフへの要望もおそらく他所の現場とは変わった内容になっていることと思います。本業が構成作家であるということでシナリオと構成は一応専門分野です。そして幸運なことにもともと芸人をやっていたことと、演劇の演出経験があったためにキャストを活かすことや演技指導ができました。作品全体の演出もなんとかイメージできます。しかし、それぞれのセクションの細かい技術やノウハウ、ワークフローについて僕にはさっぱり分からないのです・・・ね?これ、ちゃんとしてないでしょ?

 

そこでとてもありがたいのが「ディレクション能力のあるスタッフたち」です。僕がやりたがっていること(作品全体の演出意図)を汲み取ってくれた上で、実際にどうすればそれを実現できるのかを担当ごとに工夫して持ち寄ってくれる専門スタッフです。時間も予算も無い中で少しでも良い作品にするために「だったらこうしましょう!」「こういうやり方があります!」と率先して提案してくれる頼もしいスタッフたち・・・みんな大人だなぁ、プロだなぁ、といつもいつも頭が下がります。他所の畑から来た監督だからこそ活かせば活きる武器もある代わりに、有能なスタッフでないと支えられないということですね(自分で言うのもなんですが)。「細かく指示してくれないとできません」というディレクションスキルのないスタッフだと、僕には具体的な指示を与えることができないんですね。なのでそのような有能なスタッフたちにいつまでもおんぶにだっこな状態を打破するために、僕はたくさん勉強して一刻も早くちゃんとしたアニメ監督にならなくてはいけないのです!

 

さて、そんな崇高な意識だけは強く持ちつつも、『てさぐれ!部活もの』がようやく落ち着いた途端に次のプロジェクトが動き始めました。さんざん「ちゃんとしたアニメ監督になる!」なんて大口を叩いておきながら、今度はアニメの「生放送」です・・・ますますバラエティ的で特殊なアニメになってる(笑)。

 

タイトルは『みならいディーバ』。日本放送の吉田尚記アナウンサーが製作総指揮として音頭を取り、声優の村川理恵さん&山本希望さんがキャラクターの声だけでなく、モーションキャプチャースーツを着込んでキャラクターの動きの演技までつけて生放送する、という前代未聞のアニメ(?)です。しかも放送尺は50分!NOTTVさん他で7月14日(月)21時より放送予定です。

 

ちゃんとしたアニメ監督になるどころか、ますます多くのスタッフさんたちに助けていただきながらお贈りする『みならいディーバ』、なにとぞ宜しくお願いいたします。

 

 

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石ダテ コー太郎
アニメ監督・脚本家・放送作家
代表作は『てさぐれ!部活もの』『直球表題ロボットアニメ』『gdgd妖精s』
1974年5 月27日生まれのB型 趣味は料理、アニメ鑑賞など

 

 

 

 

 

 

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ええと、「はじめまして」の方が多いでしょうか?『てさぐれ!部活もの』や『直球表題ロボットアニメ』、『gdgd妖精s(第1期)』など、ちょっと変わったCGアニメを作っております石ダテコー太郎と申します。もともと芸人をしておりましたが残念ながら鳴かず飛ばずで放送作家に転身、さらにアニメ好きが高じてひょんなことからここ数年アニメ作品の制作に関わらせていただくことになりました。

 

新創刊の秋葉原フリーペーパーで何かコラム的なものを書いてほしいとのオーダーを受けまして、さてどんなことを書けば読者さんに喜んでいただけるだろうか、とぼんやり考えました。せっかくアニメ監督&脚本家という仕事をしているのでアニメ制作現場の裏側なんかをご紹介できたら良いのかな、と思いつつも、僕が作っているアニメはただでさえ(一応アニメファン層向けではあるものの)バラエティ番組やお笑いの方法論を持ち込んだ、どちらかと言えば“画の付いたアニラジ”的なかなり特殊な作品なもので、さらにその「裏側」となればますますご興味のある方が限定されるだろうと思います…。そこで、ただの制作秘話ということではなく、他の畑からやってきて特殊な3Dアニメ作品を発表しているこの新米監督が“ちゃんとしたアニメ監督”をめざし、一人前のアニメ監督になるための「奮闘記」を書き綴っていけたら少しは読み物として面白いものになってくれるかな?と思い立ち、筆を取らせていただいた次第です。「はじめまして」から始めてしまったせいか、なんだか文体が堅くぎこちないですね(笑)

 

さて、突然ですが「アニメ監督に“最低限”必要なスキル」ってなんでしょうか?アニメーション制作の知識や経験でしょうか?可愛いキャラクターやかっこいいロボットを魅力的に動かせる技術でしょうか?面白い内容を考えられることでしょうか?声優さんたちの魅力的な演技を引き出すよう指導できることでしょうか?

 

ご存知の方も多いかと思いますが、アニメ制作には作画、音響、シリーズ構成、の大きく3つのセクションがあります。平たく言えば映像と音と物語ですね。その3つのセクションにはそれぞれ責任者がいて、上記の内容はすべて各セクションが責任を持ってやってくれるんです。それぞれのセクションの中ではさらに細かく役割が分かれているわけですが、その3つのセクションの上に「監督」がいます。その監督の唯一であり最大の仕事は「全体をひとつにまとめること」です(…と僕は考えています)。つまり、その3つのセクションで作られるものを「与えられた条件下で、ユーザーを満足させるために、明確な演出意図を持って、ひとつの作品としてまとめあげる」ことが監督の仕事です。なので実は、厳密には特に何の技術も知識も要らないんです。むしろそこに必要なのは、きちんとターゲットとなるユーザーを満足させるための「リサーチ&シミュレーション能力」や、スタッフ&キャストが「この人が言うことなら信じて尽力しよう」と感じてもらえるための「信頼関係」が最も監督にとって必要な要素ではないかと思っています。畑の違うクリエイターである僕が、まがりなりにも今「アニメ監督」という仕事が出来ているのはこんな理由からなのです。以下、第2回目に続きます。

 

 

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石ダテ コー太郎
アニメ監督・脚本家・放送作家
代表作は『てさぐれ!部活もの』『直球表題ロボットアニメ』『gdgd妖精s』
1974年5 月27日生まれのB型 趣味は料理、アニメ鑑賞など